自分をいつどこに置き去りにしてきた?
- さら ともみ
- 7月14日
- 読了時間: 5分
更新日:7月14日
私たちの心にはいろんな色がある。
喜びや悲しみ、怒りもあるし、幸せ色もあるかもしれない。
嬉しい時は軽やかな気持ちで前向きになれるけど、
怖いと感じるときは急に心が重くなり、動きづらくなることがある。
まるで重力に引っ張られているかのように。

身体と心の正直さ
悩むと俯き加減になる。不安になると首が下がる。
呼吸が苦しくなって、まじのGに感じる。
重力というのは比喩ではあるけれど、
怖さや悲しみが心にのしかかると、私たちは自然とうつむきがちになったり、
その感情に耐えようとするときはグッと食いしばることもある。
耐えきれなくなると、倒れ込んでしまうことすらあるのです。
そうした心の動きは、、記憶や経験から呼び起こされる感情のまとまり。
いわゆる心的内容が関係しています。
緊張したときは、意識的に肩を下ろして深呼吸をすると、
身体の力が抜けるのを感じることができ、緊張を解放するスイッチが入ります。
このように、身体から整えることは心の状態を変える助けにもなります。
そして、さらに心の整え方を知っていれば、
自分でかけてしまった心の重力から抜け出すことも可能になるでしょう。
身体と心は掛け合わせで動いている。

河合隼雄先生の『コンプレックス』から考えたこと
河合隼雄先生の著書『コンプレックス』を久しぶりに拝読し、
私たちは知らぬ間に自分の中に「自分ではない何か」を作り上げていることをイメージしました。

本当は悔しいのに喜んでいる顔をしたり、
できていないのにできているふりをしたり、
相反する感情が心の中で同時に存在し、
本来表現したかったこととは違う行動をしてしまうことがあります。
「やりたいのにできない」
これは双極性障害や対人恐怖症などの疾患に限らず、
誰にでも日常的に起こり得る現象であると著書でも説かれていました。
病的な状態と通常時に起きる心の現象の境界は、それほど明確ではないのです。
河合先生はこの心の現象を、主体性を脅かすものとして説明しています。
ここでいう主体性とは本来の自分のことを指し、それを脅かすものがコンプレックスです。
ユングが提唱した「feeling-toned constellation(感情調律された複合体)」という概念に基づくもので、
コンプレックスは排除や抑圧の対象ではなく、自己の一部として捉えるべきものだとされています。
無意識に抑圧されたコンプレックスは、自律的に活動し始め、自我のコントロールを越えてしまうことがあります。
これは、自分の一部が勝手に動くように感じられる現象です。
ユングはこれを「自己と自我の分離」と捉え、その回復過程を個性化(Individuation)と呼びました。
香り師アドバンスクラスでのシェア
先日の香り師アドバンスでは、この『コンプレックス』の一部抜粋の紹介と、コンプレックスとの付き合い方について少し解説をしました。

コンプレックスなるものの形成は、大きな出来事だけで形成されるわけでなく、
日常の自分の本音を無視した瞬間から始まっていくと、香り師としては考えています。
本当は食べたくないのに、断れなくて「ありがとう」と言って受け取ったとき。
心のどこかで違和感を感じながらも、相手を優先して自分の感覚を後回しにしたとき。
そういう小さな自己の裏切りが、ほんのわずかな“分離”を生み、
それが積み重なることで、 自分が自分でないような感覚や、本当の気持ちがわからないという状態に繋がっていきます。
多くの方との対話の中で、 「自分を置き去りにしてきた」という実感を教えてもらうことがあります
そこから自分を取り戻すことがスタートになることは少なくありません。
まずは、自分が日常で、
”自分と外側の世界にどんな小さな嘘を積み重ねているのか”
を見つけていくことから始めてみても良いのではないでしょうか。
自分自身を取り戻すレッスンです。
コンプレックスとの向き合い方
河合先生は、コンプレックスを否定・排除せず、自己の一部として統合していくことが大切だと説いています。
全く同意します。
日常の小さな自己否定や、世間に合わせる無意識のクセ、いい人であろうとする演技などささやかな嘘が積み重なり、
自分がわからない、本当の気持ちが出せないという苦しみを生み出します。
これは抑圧の始まりであり、ユングは抑圧こそが「コンプレックスの起点」と繰り返し述べました。
本当は嫌だという感情を、例えば良い子でいたい・嫌われたくないという願望で無視・否認すると、心の中に葛藤が生まれます。
こうした分離や違和感に向き合うことは、本当の私に還るプロセスであり、香り師として取り組んでいる”全体としての自分であること”にも繋がっています。
河合先生も「本当の気持ちを感じることから心の回復は始まる」と述べています。
自分の心の声にきづいてあげることは、大切なことですね。
最後に今後の展望として
今後の<本を読むクラス>などでも、『コンプレックス』を取り扱ってみようかと考えています。
様々な文脈から先人の知恵を活かし、 この社会をより生きやすく、より良いものにしていく存在として、 香り師の育成をはじめ、各セミナーやクラスを展開していきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

※このアカウントに記された内容は、心理学をはじめとする各学問、宗教的伝統、哲学、各種聖典など、複数の知見を背景としています。
それらに深く探究を重ねてこられた先人や専門家の方々への敬意を込めつつ、香り師としての実践・体験・対話のなかで、香りと結び合わせながら、独自に再構築した捉え方です。
教義や専門知の解説を目的としたものではなく、実践を通して立ち上がってきた思考や感覚を編み直し、ひとつの体系として提示しているものです。
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