剛柔相易わり、典要となすべからず、ただ変の適くところのままなり。
- さら ともみ
- 2月9日
- 読了時間: 4分
剛柔相易わり、典要となすべからず、ただ変の適くところのままなり。
『易経』繫辞下伝より
ごうじゅうあいかわり てんようとなすべからず ただへんのゆくところのままなり
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(大意)
剛(剛健なもの)と柔(柔順なもの)は常に入れ替わり、固定された決まり(典要)とすることはできない。ただ変化が生じるところに従うのみである。
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この一節は、『易経』の根本思想である「変化の原理」を表しているそうです。
剛柔は、陰陽にも置き換え考えることができます。
陰陽は常に一定のものではなく、陽が極まれば陰に転じ、陰が極まれば陽に転じるようにこの世の循環やバランスを象徴するものです。
剛と柔はいつも入れ替わり、動きのあるものと考えます。
そうであるからこそ「典要となすべからず」
世の中のすべては常に変化し続けるからこそ、それらは固定された決まりや当たり前とされている約束ごととすべきではない。
この教えは、固定観念を捨ててみることの提案です。
ある時には良いとされるものが、ある時には悪いとされる。
立場が変われば、ものの評価が変わることもあります。
混沌とした変化をそのまま見つめることが大切であるということだそうです。

雑感:言葉の常識の変化から思うこと
これ以降は私の雑感です。
昨今では、言葉の定義も目まぐるしく変わります。
これまでは誤りだとされてきた使い方も、今では辞書に掲載され、一般的なものとして使われることが容認された例も少なくありません。
たとえば、「全然」はかつて否定形とともに使われるのが正しいとされていました。
「全然ダメだ」「全然知らない」といった使い方です。
しかし近年では、「全然大丈夫」「全然おいしい」などの肯定表現にも使われるようになり、国語辞典にもその意味が記載されるようになりました。
この変化に違和感を持つ人もいますが、日常的にはすでに定着している表現でもありますよね。
しかし、これすらも適切な認識ではないようなのです。
「全然」という言葉の変遷
「全然」の語の歴史を辿ってみると、
江戸時代後期に中国語からの借用語として日本語に入ってきて、
そして「全然」という語が定着したのは明治40年代以降のことで、
この時代の「全然」は否定的にも、肯定的にも用いられていたことがわかっているとの記述がありました。
前節では、「全然」の変化の否定的用法から肯定的用法という一側面を見たが、「全然」 の変遷は「否定から肯定へ」のように単純に捉えられるものではなく、複雑な道筋を辿っ てきた。「全然」は江戸後期に中国語からの借用語として日本語に入ってきた。これが日本語として定着・確立するのは明治 40 年代以降で、この時代の「全然」は否定的にも、否定辞を伴わずに肯定的にも使うことができた。つまり、現在誤った用法と見なされている 肯定的用法がかつては正しい用法だったということである。 『日本語話し言葉コーパス』を用いた「全然」の変化の詳細化』佐野 真一郎(国際基督教大学)
さらに大正時代に入り、大正期の終わり頃には否定的な使い方のみが残り、
そこから再度肯定的に使われるようになるのは、昭和20年以後であったようです。
このように見ていくと、否定的な用いられ方は一貫して変化がみられませんが、肯定的な用いられ方にについては、
時代によって現れたり消え去ったり、また復活したりと揺らいでいることがわかります。
「やばい」という言葉もそうですよね。
こうした変化は、言葉が時代とともに進化し、話し手と聞き手の間で通じやすい形に変わっていく過程の一つだと思います。
一定のルールを持ちつつも、言葉は生き物のように変化し続ける中で、
大人が最近の子どもの言葉使いに違和感を感じたり、うちの子のその言葉の使い方ってどうなの?
という感想を持っている場面に立ち会うことも増えたことを最近感じていたので、
これも固定概念を捨て去ってみることを示されるひとつのシチュエーションかなぁと、思いを馳せた次第です。
「剛柔相易わり、典要となすべからず、ただ変の適くところのままなり。」
この教えはあらゆる場面で思い返すことができそうですよね。
この教えを眺めたとき、あなたが思い浮かんだものは何がありましたか?
ぜひ教えてください^^
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