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蠍座新月(蠍座29度)― 深い別れと、生まれ変わりの直前に立つとき


あまり書いたことがないので、たまにはこういう記事も書いてみようと思います。


昨日の新月は蠍座の最終地点、29度で起こりました。


蠍座は12星座のなかでも特に、終わりと再生を司るサインです。


その最後の1度にあたる29度は、蠍座の本質が最も濃縮される地点だと言えます。


蠍座新月

占星術やサビアン研究の文脈では、12星座の29度を俗に「涙の度数」と言うことがあります。


29度はサインの最終移行段階にあり、手放しや喪失、浄化、感情のエッジといった働きが生じやすく、感情がピークに達しやすいのです。


現実では別れや後悔、葛藤、切り替えが顕在化し、心が揺れやすくなります。


このように、29度という度数自体が涙を象徴しやすい状態を持つため、しばしば涙の度数と呼ばれるわけです。


涙は単なる悲しみではなく、エゴの溶解、固着の解体、感情の排出という象徴でもあります。


言い換えれば、それは自分を縛っていたものが剥がれる痛みのプロセスです。


特に水のエレメント(蟹・蠍・魚)の29度は感情のグラデーションが濃いのですが、蠍座はそのなかでもとりわけ情の濃度や生死、執着、別れ、魂の浄化に関わる要素が強い。


今回の蠍座29度での新月は、まさにその濃度が押し出されるタイミングでした。



蠍座29度の象徴(サビアン)


サビアンシンボル(原典)は次の英文で表されます。

An Indian squaw pleading to the chief for the lives of her children.

(我が子のために酋長に命乞いするインディアンの女)


部族社会のなかで、子どもが部族の長から処罰を下されようとしている。


母親は、子どもの命を守るためにすがりつき、必死に懇願している。


それは、守りたいものと手放さなければならない現実が正面から衝突する瞬間です。


執着を手放すときも、同じような痛みに触れたことはないでしょうか。


サビアンは歴史的に、霊感でイメージを受け取った人物(Elsie Wheeler)と、それを整理した占星家(Marc Edmund Jones)らに記録され、のちにさまざまな占星術家が解釈・翻訳してきました。


日本でも直居あきら氏や松村潔氏らが独自に深い解釈を示しており、流派や訳出により象徴表現は少しずつ異なります。


この蠍の29度のサビアンは、どの訳も本質的には”守りたいものを前にした極限の感情”、”喪失と受容”、”再生の機会”を指しています。


どのようにこの度数を考えるか


終わりを認める勇気を持つ。手放せないものに蓋をしない。


大切だったものをきちんと弔う。儀式的な区切りをつけることで、再生の余地が生まれる。


執着が浮き上がっても、それを感情ではなく冷静に観察する。


何がそこに自分を縛りつけているのかを自分自身に問い、具体的な小さな一歩を設定する。


そのようなことを意識してみます。


29度は射手座へ向かう直前。深い領域での決別が健全に終われば、視野の拡大、探究、旅への準備が始まります。



今回の新月が示すこと


あなたを取り巻くひとつの関係性・役割・価値観が寿命を迎えた可能性です。


執着を抜け、次のステージへ移行しはじめる絶好の機会です。


自分は何を重んじ、何を手放すのかを再定義してみてください。


自分の今までの直したい思考の癖や不要な関係性を見直します。


それらの深い内的な崩壊のあとに、射手座的な自由(直感・遠くを見る視点)がやってきます。


無理に前向きになろうとせず、まずは感じることを許してください。


深く揺さぶられる感覚があるなら、それは向き合うに値するテーマです。



蠍座29度の象徴(サビアン)


このサビアンについて考えを深めてみます。


An Indian squaw pleading to the chief for the lives of her children.

(我が子のために酋長に命乞いするインディアンの女)



インディアンの女は、子を失い、何を得たのだろうか。


このサビアンの物語において “母親が子どもを失って得るもの” は 幸福でも希望でも救いでもなく。


この象徴が扱っているのは、


「失うことで強制的に起きる変容」であって、


成長という言葉を使うなら、


“その以前の価値観では生きられなくなるほどの変化”


のことを指しているのではないでしょうか。



この象徴の核心は、


子どもを守るという、母親としての最大の使命が達成できなかったときに、その人は “何によって生きるのか” が問われる。ということ。



“子どもを失った結果何かを得る” のではなく、


最重要だと思っていたものが崩れたあとに、アイデンティティが再構成されるのです。



具体的には、


・依存していた役割からの解放

(母親という役割だけが自分の存在理由だった状態の終焉)


・生きる意味を外側に置くことから、内側に戻す

(他者のために存在する → 自分自身として存在する)


・絶対的な執着の破綻により、自己の輪郭が描き直される

(“私とは何か”が初めて自分基準で定義される)


ようなこと。


そして何より象徴的なのは、


奪われることを最も恐れている時は、奪われる前の自分に縛られ続けますが、


奪われたあとに初めて、恐怖による生き方から自由になれる可能性が生まれる


という構造です。



ここで得るのは「幸せ」ではなく、以前の自分では到達しなかった自由です。


それらが星の中では射手座への移行となります。



この度数が残酷であり、同時に強い理由


多くの度数や星からのメッセージは、


新しいものに出会って変わるとか、学んで変わるとか、気づいて変わるという段階を扱います。


けれど、蠍座29度は違う。


手放そうと決意して変わるのではなく


外的状況によって奪われ、崩壊し、変わらざるを得ない。


意志の成長ではなく、宿命的な変化にも近いものがあります。


しかも蠍座は情、結びつき、同化がテーマのサインなので、


29度ではその「最も愛しているもの」「最も執着していたもの」が剥ぎ取られる象徴構造になる。


感覚的にはきつい。つらい。笑



けれど、これは流れの中のプロセスですから、


“別れ”や“痛み”の象徴というよりは、


愛と結びつきのピークが、消滅を通して転換する場所


と言ったほうが正確です。



現実の心理学的な文脈に置き換えて考えてみる


人が最も深く変わるのは


好きなことを見つけたときではなく、


守り続けてきた価値が崩れたときであると言えます。



子どもに限らず、ここで象徴されている「子ども」は


”絶対に失いたくない対象”


”自分の存在意義の拠り所”


”最も深く同一化している関係や役割” のメタファーです。


これらが失われるような感覚に陥ったことがある人は分かると思うのですが、


足元の土台がガタガタに崩れてしまうような心許なさを感じたりします。


それが不安定すぎて、落ち着かないし手放すことが怖いのですね。



だけど、それが崩れたあとに残るのは


“私は何のために生きるのか” という問いだけ。



そしてその問いに耐えながら、再構成された自己へ移行していく。


これが 蠍座29度の変容の力。


だから答えは、とても静かで残酷に見えて、しかし芯があります。



女は子どもを失って “何かを得た” のではなく、


子どもを失うほどの喪失によって、


「子どもを守る者としての自分」ではない生き方へ強制的に踏み出すことになった。ということです。



多くの自己啓発やスピリチュアルは、


“幸せになったら人は変わる”

“いい未来を選べば変化が始まる” という幻想を扱うけれど、


蠍座29度(そして深い変容を伴う心理プロセス)はむしろ逆で、


奪われる

壊れる

終わる

手放さざるを得なくなる


といったものが起こるので、つらい気がする。


その後にしか本質的な変容は起きない。


以前の自分を守っていたものすべて、例えば、


・役割

・愛着

・執着

・物語

・正しさ

・被害者の立場

・救いたい誰か

・必要とされたかった自分

・これは永遠だと信じていたもの(信じていたかったもの)


これらを抱えている限り、人は変わらなくて済みます。


大変だ〜と言いながらも、現時点での存在の安定を保てるのです。



だけど、変容は、安定よりも真実に触れることを優先します。


つまり、守ってきたものが崩れた時にしか、魂(自己)は更新されないというのは、もうわかりきったことなので、それを避けている限り、宇宙の流れには乗れませんね。



ただ、ここには真実があるので、


その真実を受け入れられた人は、他者に依存して生きるのではなく、自分の核に従って生きる段階へ移行することになります。



そして奇妙なことに、


一度この変容を通過した人は、同じ痛みにもう二度と支配されないのです。


※補記:サビアンの成立史については諸説ありますが、象徴語句はElsie Wheeler(霊視を行った)→ Marc Edmund Jones(整理・記録)→ Dean Rudhyar などが解釈を重ねてきた流れで伝わっています。訳語・解釈は流派により差異がありますので、「サビアン解釈の一例」としてお読みください。



いつもありがとうございます。


今日はホロスコープからサビアンシンボルを考えてみました^^


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静けさの中に、小さな光を。


さらより。


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